すい臓がん手術後の後遺症

すい臓がんの手術は、がん手術の中でも比較的大がかりなものです。

特に全体の60パーセントを占める「膵頭部がん」の場合、すい臓の一部に加えて、十二指腸や胆管、胆のう、胃の一部なども一緒に切除する侵襲の大きい手術になりますので、それだけ合併症や後遺症のリスクも高くなります。

すい臓がんの手術後によくみられる後遺症としては、糖尿病や胆管炎などが一般的です。特に糖尿病は頻度が高く、インスリン注射などを活用しながらうまく付き合っていく必要があります。

すい臓がんの手術後によく起こる後遺症や、その症状、対処法などについて詳しくご紹介していきます。

がん手術の後遺症とは

手術の後遺症とは、手術後に残るさまざまな症状の総称です。一時的なもので済むものもあれば、長く付き合っていかなければいけないものもあります。

どのような手術でも、体にメスを入れる以上、何らかの後遺症が残るリスクはゼロではありません。

それ以上にメリットのほうが大きいと考えて選択するのが手術ですので、あらかじめ後遺症のリスクについては理解しておく必要があります。

糖尿病

すい臓がんの手術後にみられる後遺症のうち、もっとも代表的なものが糖尿病です。

すい臓では「インスリン」という、血糖値を下げるためのホルモンが産生されています。体内でつくられる数あるホルモンの中でも、血糖値を下げる働きがあるのはインスリンだけです。

インスリンは、すい臓のあちこちに点在する「ランゲルハンス島」という細胞群で産生されています。

すい臓がんの手術では、すい臓の一部(もしくは全部)が失われますので、それだけランゲルハンス島の数も少なくなり、インスリンの分泌量が以前よりも少なくなってしまうのです。

ほかに血糖値を下げてくれるホルモンがないため、インスリンが減少すると高血糖に直結します。

本来、健康な体では、食後に一時的に血糖値が上がっても、すみやかにインスリンが分泌されて正常な血糖値に戻してくれますが、インスリンが十分に分泌されないと血糖値が高いままになってしまい、喉の渇きや多尿、悪化すると神経障害や視覚障害などにも発展していきます。

すい臓がんの手術前から既に糖尿病だった患者さんも、術後に症状が悪化することが一般的です。

どうしても血糖コントロールが難しい場合は、インスリン注射が必要になります。特にすい臓を全摘出する手術を受けた場合は、インスリンの自己注射は必須です。

胆管炎

すい臓がんの中でも、特に頻度の高い「膵頭十二指腸切除術」では、手術で胆管や胆のうも一緒に摘出するため、胆管と空腸(小腸の一部)をつなぎ合わせて胆汁の通路をつくる必要があります。

この時、胆管と空腸をつなげた部分(吻合部)が狭くなってしまって、胆汁の流れが悪くなったり、腸液が胆管内に逆流したりすると、「胆管炎」が起こることがあります。

腸液が胆管に逆流した場合、細菌感染によって高熱が出ることもありますので、抗生剤で治療します。また吻合部が狭くなっている場合は、内側から拡張させる治療が必要になる場合もあります。

胃切除による後遺症

膵頭十二指腸切除術では、近くにある胃の一部も切除することが一般的です。一部であっても胃切除したことによって、胃に関連するさまざまな後遺症が起こることがあります。

たとえば胃が小さくなることで、1回の食事量が少なくなるため、体重が減少してしまうことがあります。また胃切除すると、特に「鉄」や「ビタミンB12」の吸収が悪くなり、貧血になりやすくなります。

血液の赤血球は、骨髄でつくられていますが、その材料として鉄とビタミンB 12が必要です。

どちらも体内に吸収されるためには、胃酸や、胃壁でつくられるタンパク質などが必要になるため、胃を切除してしまうと貧血になりやすくなるのです。

この場合は、鉄剤やビタミン剤などで対処していきます。

脾臓切除による後遺症

膵頭部ではなく、膵体部や膵尾部にできたがんの場合、すい臓の一部と一緒に脾臓も摘出します。

この場合、消化管の再建の必要はありませんが、脾臓を摘出することで「免疫力の低下」という後遺症が残る可能性があります。

脾臓は、お腹の左上にあるこぶし大の臓器で、普段あまり意識されませんが、血液の中を流れる古い細胞や血球を除去してくれるフィルターのような働きをしています。

またB細胞やTリンパ球などの免疫細胞を成熟させる役割もありますので、脾臓を摘出すると感染症にかかりやすくなったり、重症化しやすくなったりするのです。

そのため、脾臓を摘出した患者さんには、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。

また、脾臓は血小板の貯蔵庫としての役割もあるため、脾臓がなくなることで血中の血小板が一時的に増えることがあります。

血小板には、血液を凝固させて出血を止める働きがありますので、増えすぎると血栓ができやすくなります。

そのような場合は、必要に応じて「抗血小板薬」を使います。

このように、すい臓がんの手術ではさまざまな後遺症が残る可能性があります。困ったことがあれば、フォローアップ検診の際に医師に相談し、そのつど対処法を考えてもらうようにしましょう。

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